2023年、世田谷区の待機児童は10人でした。
2020年に待機児童ゼロを達成してから、22年まで3年連続で0人をキープしてきた世田谷区にとって、10人増加はまさかの事態と言えるでしょう。
2023年に至るまでの世田谷区の待機児童対策と実際の推移を見ていきましょう。
保活激戦区の代表格とも言われてきた世田谷区は、待機児童数が全国的な社会問題となりつつあった2016年には待機児童が1198人とピークに達していました。
しかし、区の取り組みが功を奏して、世田谷区の待機児童は徐々に減少傾向をたどります。
上記のグラフを見ても、世田谷区の待機児童は2016年から着実な減少をたどり、2020年にはなんと一気に470人減り0人となる成果を出しました。
世田谷区がとった待機児童対策は、主に認可保育園の増設と言われています。
区が公表している資料によれば、世田谷区の保育定員(受け皿)は、待機児童470人だった2019年の19648人に対して、待機児童ゼロを達成した次年度には20440人と、792人分もの受け入れ枠の増設を実現しました。
また、それに加えて、少子化にともなう就学前児童数のピークアウトや出生率の低下などによって、需要と供給のバランスがとれてきたことも理由に挙げられるでしょう。
出典:各市区町村の「新子育て安心プラン実施計画」(令和5年度)/こども家庭庁
世田谷区の取り組みは順調だったにもかかわらず、2023年に待機児童がゼロから10人に増えた背景には何があるのでしょうか。
この年の待機児童はすべて1歳児クラスです。
2023年の世田谷区における1歳児の人口は6377人で、前年度から1.4%増加しています。0歳および2歳から5歳人口が7.6%~4.9%の割合で減少しているなか、1歳児だけが唯一の増加を見せました。
また、申込者数の前年度比を見ても、他年齢がすべて減少しているなか1歳児の申し込み数だけが6.5%と大きく増えたことが分かります。
さらに地区別にみると、1歳児の申込数が減少している地区があるにもかかわらず、北沢地区9.2%・玉川地区11.8%・砧地区12.8%と大きく増加に転じた地区があり、偏りが見られました。
特に玉川・砧の両地区では100人以上の増加を見せており、待機児童10人もすべてこの両地区に集中しています。
このように、2023年の待機児童は、特定の年齢(クラス)・限られたエリアの受け皿が足りなくなることで生じた数ということが分かります。
世田谷区はこの待機児童の発生に対して、区立・私立保育園での1歳児の定期利用保育を5月以降に急きょ再開しました。過去の実績を活かし、スピード感を持って保育の受け皿対策ができることの証明となったでしょう。
世田谷区では、待機児童の算出方法を公開しています。
上記の表は2022年のもので待機児童数は0人となっていますが、その算出に至るまでには、認可保育園の内定が出ていないが、さまざまな理由で待機児童にカウントされていない数があることが分かります。
なかでも「【2】入園申し込みの時点で、育児休業の延長を希望した世帯(児童)数」を除外した数だけ見ても、実に601人にものぼります。
つまり、待機児童は0人であっても、実際には希望した認可保育園に入園できずあきらめた、もしくはやむなく認可外保育園などを探して対応した世帯が多く存在しているということになります。
また「【9】自宅から30分未満(半径2km以内)で登園可能な距離の特定教育・保育施設等に空きがありながら入所できていない児童数」が245人となっていることにも注目したいところです。
これらは、特定の希望園があり、その園に入園できなかったために他の園を希望していなかったという層になります。
このような特定の保育園以外を希望しない選択をする世帯は、特に待機児童ゼロの自治体で多く見られ、厳密な待機児童には数えられませんが「隠れ待機児童」と呼ばれています。
このように、待機児童数だけでなくその内訳にも目を向けてみることで、世田谷区が抱える問題が見えます。これらは保活に取り組む上でも知っておくべき情報かもしれません。
世田谷区の待機児童の推移と現状、また待機児童数算出の内訳について見てきました。
それらを踏まえ、世田谷区で「保育園に入れない」状況を避けるための対策を考えましょう。
先述したように、2023年の待機児童10人はすべて玉川地区・砧地区から出ています。
主な原因としては、砧地区は大型マンションの入居開始にともなう子育て世帯の増加、玉川地区はエリア内に新設された大型園「区立等々力中央保育園」の開園が4月に間に合わなかったことが原因ではないかと言われています。
砧地区は緑豊かな人気のエリアだけに、2024年以降もマンション建設・入居予定があり、今後も子育て世帯の流入は増える可能性がありそうです。
また、砧公園近辺は最寄駅から遠い立地もあることなどから、マンションが多い地区などでは、駅周辺より住宅地内の保育園に希望が集中することも考えられます。
通う範囲を広げて近接エリアへ足をのばすなど、視野を広げた保育園選びが求められるかもしれません。
2023年の世田谷区の待機児童10人は、エリアだけでなくすべて1歳児と年齢にも偏りがあります。
たとえば、待機が集中した砧・玉川地区であっても、1歳児以外のクラスでは定員割れがあるようです。
そのため、激戦になりそうなクラスの場合は、最初から認可外園に絞って保活をすすめることも検討する必要があるかもしれません。
世田谷区では認証保育園の人気も高く、利用が年々増えていることも特徴のようです。そのため今後も認証保育園の拡充を進めていき、認証園から認可園に移行することも区としてバックアップしていくとも言われています。
特に保活の正念場となる1歳児では、認可・認可外・認証保育園など、できるだけ選択肢の幅を狭めない保育園選びがカギとなりそうです。
世田谷区は保活激戦区だった時期が長いこともあってか、認可外保育園が非常に充実しています。特に幼児教育やスポーツに力を入れている認可外保育園には人気が集中することもあるようです。
認可園に比べて保護者に対するサービスが手厚かったり、さまざまな教育活動や習い事プログラムが充実していたりといった園も多くあります。
認可外ならではの条件を活かし、利用しやすい駅の近くに設置されている都市型園などは通勤にも便利です。また、近隣に大きな公園があるエリアなどではあえて園庭にこだわる必要もない可能性も考えられます。
認可保育園を第一希望にする場合でも、保育園探しの際には近くの認可外園も選択肢に入れて、見学などに行ってみることで新たな発見があるかもしれません。
保活激戦区になるのも納得できる、暮らしやすさと子育て環境のよさが特徴の世田谷区。子育て支援や待機児童対策にも真摯に取り組んでいることも伺えます。
世田谷区で保活に取り組む場合は、エリアと年齢(クラス)の現状をしっかり把握したうえで、できるだけ多くの選択肢をもって臨みたいですね。
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